健康に生活できる1年に 「吉祥天女」に招福の祈り――薬師寺・大谷徹奘さん法話

 コロナ禍に苦悩する2021年(令和3年)も、あとひと月ほどで過ぎようとしています。来たる令和4年が、国民一人ひとりにとって良き年になることを、更には世界中の人々が安心し、健康に生活できる世の中になることを、心より祈念しています。

 今回はお正月に特別開扉される『吉祥天女』をご紹介します。

 薬師寺では1月1~15日に、修正会(しゅしょうえ)の法要が勤められます。これは奈良時代から続くもので、その際、ご本尊・薬師如来のお膝前にお厨子(ずし)が安置され、吉祥天女をお参りしていただいています。

 奈良時代には諸大寺で吉祥天女をお祀(まつ)りして、ご祈願するという習慣があったそうです。これが今日の初詣の源流になったといわれます(諸説あります)。

 薬師寺に守り伝えられてきた吉祥天女は、今からおよそ1200年前に麻布に描かれた着色画像で、その貴重性から国宝に指定されています。近年までは修正会の期間中ご参拝していただきましたが、現在はこの仏様を守り伝えるため、1月1~3日の三が日に限定しています。なお、4~15日は、国宝の吉祥天女に科学的な調査を施して描かれた当初の色鮮やかな姿を復元した吉祥天女(平成本)がお祀りされます。

 法要では国家安穏、万民豊楽、五穀豊穣、鎮除疫病などがご祈願されますが、お参りの方々は薬師如来に健康を、吉祥天女に招福を祈願されています。

 また、吉祥天女のご功徳の一つである「技芸守護」に、スキルアップを願われる方も多くおられます。

 法要での私の勤めは国家・国民の安穏を祈らさせていただくことです。しかし、僧侶といっても一人の人間、個人的な願いは持っています。それは、来たる1年を健康に、そして新しい生活パターンに即した法話に磨きをかけることです。

 令和4年の初詣は、健体康心と吉祥招福のご祈願に、薬師寺にお参りください。

合掌

(薬師寺執事長、大谷徹奘)

写真=国宝「吉祥天女像」=薬師寺提供、平成本「吉祥天女像」=薬師寺提供

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