活動報告
脂肪燃焼なら「食前」、運動の質なら「食後」に歩く――脳を鍛える歩き方⑫
今回は食事と認知症予防について、考えてみたいと思います。九州大学が福岡県久山町で取り組んでいる「久山町研究」は、40歳以上の全町民を対象にした長期間の疫学調査として世界的に知られています。認知症についても、1985年以降、調査が行われています。
発症リスクが低い食事パターンとして、「大豆・大豆製品、緑黄色野菜、淡色野菜、藻類、牛乳・乳製品」の摂取量が多く、「米」の摂取量が少ないと報告されています。これは米が悪いわけではなく、このパターンの人は、多くの食材を使ってバランスよく摂取されているということですね。
ウォーキングの効果を最大限に生かしたい場合、歩く前と後のどちらのタイミングで食事をしたらいいと思いますか? それぞれのメリットとデメリットを考えてみましょう。
まずは空腹の時、つまり食前に運動をするメリットですが、体内における糖分の血中濃度が低いので、脂肪がエネルギーとして使われやすいという状態にあります。運動後に食事をすることで摂取した栄養が使われた筋肉へ運搬されやすく、脂肪になりにくいのです。つまり脂肪燃焼を目的とするなら「食前ウォーキング」が効率的なわけですね。
しかし、食前ウォーキングのデメリットもあります。みなさんも体験したことがあるかもしれませんが、空腹な時に激しい運動をすると、貧血やめまいなどを引き起こすリスクや、集中力が普段より低く運動自体の効果が落ちやすいのです。
食後に運動するメリットはどうでしょうか。食後は糖分の血中濃度が十分にあるので運動自体の質が高くなります。また、貧血やめまいなどを引き起こすリスクが低いというメリットもあります。運動効果を高める上で糖分の血中濃度は重要です。
ただし、おにぎり1個、バナナ1本程度だったら影響はほとんどありませんが、通常の食後であれば2時間は待ってから運動したいところです。
食後は血中に栄養が満ちている状態です。この状態の運動は身体にとっては非常に効率が良いのですが、ダイエットをしている人にとっては脂肪が減ってくれません。
ウォーキングの前後どちらで食事するにしても、せっかくですから認知症予防に良いとされる食材も盛り込むことをお勧めします。
(関西福祉科学大・重森健太教授)
写真=「大豆製品や緑黄色野菜、淡色野菜、藻類、牛乳・乳製品などが認知症予防に効果があるとされています」と話す重森教授(大阪府柏原市で)
<詳しくはfacebookの動画で>
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