油断戒め 感染予防を――薬師寺・大谷徹奘さん法話

 お薬師様を信仰する方々が巡礼される西国四十九薬師霊場は、一番札所の薬師寺から始まり、四十九番札所の比叡山延暦寺で満願となります。その延暦寺の根本中堂に1200年以上守り続けられている「不滅の法灯」と呼ばれる灯が、お祀(まつ)りされていることをご存知でしょうか。

 この法灯は、788年に天台宗の開祖である伝教大師最澄さまが、根本中堂の前身となったお堂のご本尊・薬師如来様にお供えになった灯明を、今日まで一日たりとも消えることなく守り伝えているので「不滅の法灯」と呼ばれています。

 「不滅の法灯」は毎日2回、僧侶が菜種油を継ぎ足しているそうです。単純に油が継ぎ足された回数を計算すると、1200年間でなんと87万6000回も繰り返されたことになります。それだけ大切に守られてきた法灯も、たった1回でも油が断たれたならば消えてしまうのです。このことから「油断」という言葉が使われるようになったそうです(注・油断の語源は諸説あります)。

 私もこれまで幾度か「不滅の法灯」を拝ませていただいています。内陣の薄暗さによって「不滅の法灯」は一層輝いて見えます。そして、その法灯に対峙(たいじ)する度に、「お前はすぐに油断するから、注意を怠らない日々を過ごしなさい」という教えが聴こえてきます。

 新型コロナウイルス感染症が再び猛威を振るっています。盛んに「油断しないでください」と、お医者様をはじめとする有識者が警鐘を鳴らし続けておられますが、どこか油断しきって緩んでしまい、上の空で聞いているように思えて仕方ありません。

 今が感染拡大防止の山場であることは誰しもがわかっています。その中で「自分は大丈夫」とか「感染したら仕方がない」などという安易な心をおこさず、一人ひとりが「油断大敵」と胸に刻み、日々を過ごさねばならないと思います。 

合掌

(薬師寺執事長 大谷徹奘)

写真=「油断大敵を胸に刻んでください」と話す大谷執事長。西国四十九薬師霊場会では特別御朱印を授けている(奈良市で)

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